忍者ブログ
メモ帳です。それ以上でもそれ以下でもなくありたい。
19
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

箱庭療法における認知-物語アプローチの導入

認知-物語アプローチを用いた箱庭療法を適用した母親との葛藤がある21歳女性の事例を報告した。

クライエントは箱庭に自分の世界を表現し、物語り、認知-物語アプローチに従って箱庭作品の主人公の感覚・感情・思考を意識化する過程を経て主人公が直面する心理的課題を考え、それを参考にして自分自身の心理的課題を認知していく。クライエントには各箱庭療法セッションごとに作品の主人公を選定し、その主人公が活躍する物語を語ってもらう。そして主人公にとっての課題を設定し、それに照らしたクライエント自身の心理的課題を考えていく。クライエントが自らの心理的課題を意識化することにより現実に心理的課題が促進されると考えられる。
とくに知的に高い成人や心理療法の訓練生などでは、効果が認められ易いように思われる。



ダンス/ムーブメント・セラピーの効果検討

質問紙及び人物描画法を用いて、ダンス/ムーブメント・セラピー(D/MT)セッション参加者70名(男性6名、女性64名。平均年齢22.0歳)の自己に対する意識と身体イメージの変化を質問紙及び人物描画法によって効果を検討した。
約45分間の集団D/MTセッションの前後に自己認知尺度、身体像尺度の質問紙と人物描画法を行なった。
また精神障害と診断された26名を対象とした調査も行なった。
被験者はD/MT体験を通じ、自己の安定、充実感、自己理解、他者との親密化、主体性が促進された感じ、身体はより力強く活動的に好ましいものとしてとらえるようになった。また、診断群(精神障害)と非診断群との比較から、非診断群は診断群と比べ身体像評定の好転度が有意に大きいことが明らかとなった。
PR
古賀は気分状態と同質の特徴を持つ音楽を聴取した場合と、気分状態と異質の特徴を持つ音楽を聴取した場合に生じる気分変化について検討した。
教育学専攻の大学生40名(男性9名、女性31名)を対象とした。被験者をポジティブな気分に誘導するP群と、ネガティブな気分に誘導するN群に分けた。気分誘導はVelten法を用いた。被験者に気分誘導後の自分の気分と最も合う音楽、もしくは最も合わない音楽を選択させた。そのため、最も合う音楽を選択した群をP同質群、N同質群、気分と最も合わない音楽を選択した群をP異質群、N異質群とした。

気分誘導の前後に気分について回答させ、その後4曲の音楽呈示を1分間ずつ行い、被験者に1曲選択させ、その曲を最後まで聴取させた。音楽聴取後に気分と同質感について回答させた。

質問紙は気分については多面的感情状態尺度・短縮版(寺崎・古賀・岸本(1991))を用い、同質感については、音楽に対する同質感、共感・慰め、発散感の質問項目(伊藤・岩永(1999))、聴取音楽に対し感情移入がなされた場合に被験者に生じた気分についての言語報告(船橋(1981))、音楽聴取に関する項目(石川・岡本・戸口・山中・山本(1985)、岩城・田中・堀(1999)、Lehmann(1977))を用いた。
気分について主因子法により因子分析を行い「不安・抑うつ・倦怠」「活動的快」「敵意」「非活動的快」「親和」の5因子が抽出された。次に気分誘導後の得点について、被験者間の2水準で1要因分散分析を行なった。また同質感についても因子分析を行い、「爽快感」「リラックス感」「没入感」の3因子が抽出された。各因子について、気分誘導、聴取音楽のそれぞれを被験者間要因とする2要因分散分析を行なった。
その結果ポジティブな気分状態の被験者が同質の音楽を聴取するとポジティブな気分が増大した。また、気分はポジティブ気分状態の被験者では親和以外の全てにおいて聴取音楽の効果が有意であった。しかしネガティブ気分状態の被験者で聴取音楽の主効果が有意であったのは非活動的快のみであった。また、同質感はポジティブ気分状態の被験者では全てにおいて聴取音楽の主効果が有意であったが、ネガティブ気分状態の被験者で聴取音楽の主効果が有意であったのは爽快感とリラックス感のみだった。
ポジティブ気分状態ではネガティブ気分状態よりも聴取音楽の影響が大きいと考えられる。
永井は青年期の発達課題と箱庭表現の特徴と箱庭制作前後の気分変化の二つのテーマについて、検討している。箱庭制作前後の気分変化についてでは、大学生65名(男25名、女40名)に箱庭制作を依頼し、その前後に質問紙を施行した。
質問紙は60の修飾語に5件法で評定した。
まず、気分を表す修飾語の因子分析を行なった。「不満足感」「活動性」「集中力のなさ」「ゆとり」の4つと決定した。それぞれの因子の前後の因子得点に差について対応のあるt検定を行なった。その結果不満足は減少し、活動性と集中力が上昇していることが解った。箱庭制作には制作者の気分をポジティブな方向に変化させるようなカタルシス効果があることが解る。ゆとりについて有意な変化が見られなかったのは、箱庭制作では自分の内面に集中するために周囲に対するゆとりには変化が見られないと考えられる。

 12色程度の水彩絵の具、同じく12色程度のクレヨン、B5あるいはA4サイズの画用紙
色彩ブロットを23歳の自身の問題について語ることが難しい不安神経症の女性に適用した。描写が無理することなく物語を語れるように工夫し、色彩を選定するという作業から始まり、ブロットを作り、扱いやすい物へと調整し、扱いやすくなったブロットに投影・描画し、場面を構成する。そうして構成された場面に、物語を創作する。このプロセスを経ることで、一人称として語れるようになった。

23歳の男性で、精神分裂病と診断され、自殺企図もある。退院後も引きこもり傾向が強く、デイケア参加が困難であった。絵画療法とコラージュ療法はデイケア開始一ヶ月後から開始され、当初は絵画療法で描画ができなかった。これは自己イメージを安定して保持できない状態と考え、デイケアを通し、自己イメージがつくられることを期待して、描画活動を続ける。また、作品完成後に治療者と共に『言葉による題名作り』を行った。次第に、自己像は明確になり、女性像が抽象的なものから現実的なものとなった。また、このケースでは作品で表現されたものが、後の現実で実際に展開しており、現実場面に出る前に安全な世界でリハーサルを行っていると言える。
 『言葉による題名作り』の作業は、作品に本人にとっての意味を持たせ、また、イメージから現実へ移行期間に両者の架け橋としての役割を果たした。

平均年齢24.4歳の男女22名(男性9名、女性13名)にブロックを用いた表現を行ってもらい、その影響を検討した。使用したブロックは、レゴブロックであり、その制作前後に日本版POMSを行ってもらった。
ブロック制作における、性別および経験の有無による気分変容の違いを検討した結果、「活気」と「緊張-不安」において有意な差が見られた。「活気」に関しては、男性においては、経験に関係なく一定の効果が見られたが、女性においては、経験の無い群においてはその効果が認められなかった。また、「緊張-不安」に関しては、女性においては経験に関係なく一定の効果が認められたが、経験の無い男性においてはその効果が認められなかった。男性においては、過去にブロックに触れた経験が無くとも、工作・組立てに親和性が高いものと予測されるため、このような結果が認められたのではないかと考えられ、また女性が男性よりも制作前に「緊張-不安」の得点が有意に高くもなったのではないか。
また、自由記述の結果から、経験の無い群においてはネガティブな感想が現れやすいことが示された。

4年生大学の1年生61名を対象にマガジンピクチャー法、集団個人法によるコラージュ制作を行わせ、グループエンカウンターでのコラージュ制作利用の特徴等について検討を行った。
コラージュ制作の前後と、シェアリング後にPOMSにより感情・気分の評価を行う。また、コラージュ制作後、シェアリング後に振り返りのための質問紙を行った。
エンカウンター全体を通しての気分変容では、緊張・不安の緩和、敵意の軽減、混乱状態が解消されることが明らかとなった。また、コラージュ自体にそのような効果があり、シェアリングはポジティブ気分の変容を維持させ定着させる役割を持つといえることがわかった。また、振り返りの結果、グループダイナミクスの影響によってコラージュの利用が気分変容に関して意味のある役割を果たすことが示唆された。また、コラージュは媒体としてグループの中で場(文化)をも提供してえいる可能性も示唆された。

この論文で、岸本はdouble MSSM(d-MSSM)というものを紹介している。これは、岸本の創案である。
岸本は治療者と患者が同時に一枚ずつ紙を持ち、同時にグルグル描きを行い、それを交換して同時に投影する、という方法を臨床に取り入れd-MSSMとめいめいした。
診察の中で一枚法で行うと、テストとして受け取られる可能性があるが、2枚でやれば対等に紙面と向き合えると感じた。また、グルグル描きをしてから投影が見つかるまでの時間に差があるため、非言語的な駆け引きがなされる。

2枚のA4のケント紙(あるいは画用紙)、サインペン、色鉛筆
それぞれが自分の画用紙に枠付けを行い、それぞれ5つに区分けする。
ひとコマ選び、物語メモ用のコマを残しておく。そして、グルグル描きを行う。その後、互いに紙を交換する。
これを行うと、物語メモ用のコマが残った状態で、自分が枠付けした画用紙が手元に残ることとなる。
所要時間約30分

事例
神経性食欲不振の14歳女性。
両親・弟の四人が俗。母は病気で入院中。父は事務所経営。
初回面接
祖母とともに来室、本人はほとんど無言で祖母が答える。祖母に席をはずしてもらうも、ほとんど発語無し。
バウムテストと風景構成法を行う。絵を描くことはそれほど嫌いではなさそうなので、描画を適用していくことにする。
二回目の面接からd-MSSMに誘う。
初診から二ヶ月後の第九回面接:d-MSSMでは、2番目の投影が二人とも人だった、またストーリーも散歩という共通のテーマで一致した。
この回はひとつの転換点ともいえる。髪を切ったのもここでなんらかの変化が生じていることをうかがわせる。箱庭や描画では転回点で曼荼羅表現が見られることが指摘されているが、この偶然の一致も、それに相応するような布置のひとつと見ることができるかもしれない。


5分割の意味
筆者の面接時間が30分という枠組みで設定されているため。
自分が印をつけたところに物語を書けるため。
割り切れない数字であるため、分割の仕方に個性が出る。心的なエネルギーを注ぐ必要があり、このようなちょっとしたプレッシャーが実は治療へのモメントとなるのではないかと考えられる。

見立て
①分割の仕方 ②グルグル描きの仕方 ③投影ができるかどうか ④物語がつくれるかどうか ⑤投影されたアイテムや物語の内容
番号が若いところで止まるほど病態水準が深い


グルグル描きをしてから投影が見つかるまでの時間に差があることで、その差を埋めるために、以前に行ったスクリブルのネタで乗り切るという選択肢ができる。これは多少のプレッシャーは手持ちの駒で切り抜けることができるような布石となり得る。


治療者側の物語。
相手の様子を観察するというよりは、それぞれが自分の課題に取り組んで、できたものを交換する形になるので、実施中は、相手のことは気配で察知しながら自分の課題に取り組むことになる。視線を一身に浴びないことにより、侵襲を受けない形ですすめられる。
また、治療者も物語をつくることで、治療者も守られるのではないか。

投影
描画というと、描き手の内的な世界を表現したものと捉えられることが多いし、そのような側面も確かにあるが、その反対方向のベクトル、つまり、外の世界からの働きかけに応じて形を与えるという側面もあったのではないか。



ニュータイプ(笑)
「この方法は、一たん無意識界からとり出した(投影された)諸々の内容物を、意識の糸で縫い合わせることを目論んでい」る

症例2>小学校5年生男子、チック。治療は、投薬と描画療法が適量用いられる。この患者の場合は、自発的にもってくる自由画と、治療場面で行われるMSSMとを中心に治療。チック症状が前景に出ているころの作品では、「サーカス」は中止になってしまうが、症状が背景に退いたころの作品になると、「眼鏡をかけたお父さん」に甘えている。イメージ次元で表現されたことが、必ずしもすぐに現実水準で成就されるとは限らないが、変化の過程は読み取れる。

「治療」次元では美的芸術性を追求するよりも、内的イメージを自由に表現できるように配慮されている。

山中(2002)『たましいと癒し』収録
事例1 接枝性分裂病者の、とても小説とは呼べない「小説」
事例2 境界例の青年B君の小説  ペダンチック

読んだ小説を話題にするクライエント「窓」
事例3 パールバック『結婚入門』、曾野綾子『誰のために愛するか』、川上源太郎『親の顔がみたい』
 ちょうど彼女のそのときに最も必要なアドバイスを小説の中に見つけては持ってくるのであった。
事例4 『No Language but a Cry』、モーリャック『夜の終わり』
 大変に優れた言語能力がありながら、ほとんど言葉で自分を語れない、というディレンマに苦しんでいたが、小説の話をするという形で、生々しすぎる内的世界と激しすぎる外的世界いずれにも距離を置けたと思われる。

前者は、内界の直接的表現として、後者は、投影の機制を用いたかたちでの間接的な内界表現として、いずれも、立派に心理療法に組み込まれうるものであることは言をまたない。
文字を媒介とするこうした小説表現をとるものの場合、なかなか、その底流にある、こころの流れを読み取るのは難しく、一種の訓練が必要ではあるものの、そうした方法に慣れれば、これはこれで優れた心理療法の手段となりうる、貴重なものを幾多内包しており、捨てがたいのである。

某短期大学児童福祉学科(保母養成)1年生の女子学生で、1998年1月の小児保健学実習に参加した45名を対象に、コラージュ制作を試みた。
コラージュ制作の前後に日本版POMS(J-POMS)と東大式エゴグラム(TEG)を実施した。
台紙は四つ切り(38×54cm)の画用紙を用意した。
また、コラージュ制作に際し、学生の持参した雑誌からのマガジン・ピクチャー法と筆者の用意したコラージュ・ボックス法の二つの方法が併用された。
J-POMSの結果
緊張-不安(T-A)が低下
抑うつ-落ち込み(D)が低下
怒り-敵意(A-H)が低下
活気(V)が上昇
疲労(F)が低下
混乱(C)が低下
 コラージュ制作前後の精神・身体的変化では緊張-不安、抑うつ-落ち込み、怒り-敵意、混乱、疲労の改善がみられ、活気をもたらすと推察された。
また、J-POMSの6感情尺度の変化状況によって異なるのかを比較検討した。
6尺度のすべてが変化したものをⅠ群に、それ以外をⅡ群とした。
Ⅰ群では、6感情尺度のすべてに有意差を認め、Ⅱ群ではA-Hのみに有意差が認められた。怒りや敵意の感情だけは減少し、穏やかな気持ちに変化していくことが示唆された。
その両群をコラージュ制作前後のTEGの平均点と比較したところ、前者のみにAとFCの2因子が有意に上昇していた。J-POMSのすべてが変化していた場合にのみ、統合・適応性に富んだ、いわば素直で思うままに言動する子どものような気分が導きだされるのではないかと推察された。退行することで(FC)、より良い(A)統合を獲得していくことが理解できると思われた。
Ⅱ群とエゴグラムの関係ではJ-POMSの内容から、3型に分類し、TEGとの比較を試みた。その結果、D低下はACに、C低下はCPとACに有意な変化が見られた。抑うつ-落ち込みの低下は自信に満ち、現実回避からの回復を生じさせ、混乱の低下は理想を追求し、かつ柔軟性の豊かさをもたらすと同時に、協調性や自主性をも回復させてくれるものと思われた。
これらの結果から、Ⅰ群とⅡ群とでは異なる自我状態が示唆された。
また、Ⅰ群では特殊なコラージュ方法をしたものがいなかったのに対し、Ⅱ群ではすげかえが2名、裏コラージュが1名みられていた。

まとめ
J-POMSでは、緊張-不安、抑うつ-落ち込み、怒り-敵意、混乱、疲労は制作前よりも制作後に得点が有意に減少し、活気は結いに上昇していた。コラージュ制作が精神・身体的変化をもたらすことが推察された。
また、Ⅰ群とⅡ群では前者が6尺度のすべてに有意な変化があり、後者はA-Hのみに優位な変化が認められた。
TEGの平均得点で比較したところ、Ⅰ群のみにAとFCに優位差が認められた。Ⅱ群をJ-POMSの内容から3型(低下、不変、上昇)に分類し比較検討したところ、D低下はACに、C低下はCPとACに有意差が認められた。
Ⅰ群ではみられなかったすげかえや裏コラージュがⅡ群にみられた。
 以上のようなことから、コラージュ制作を行うことは精神・身体的な効果としてのストレス緩和作用が得られるばかりでなく、自我状態にも飾り気のない素直な気分、現実回避からの回復、協調性や自主性などの自信に富んだ、一種のカタルシス効果を及ぼしている可能性が示唆され、心身症をはじめ、種々の治療に与える効果が期待できると思われた。

------------------------------------------
現実感の回復はTEGで測れると考えてよいのか?
大槻(2000)は、強迫性障害で不潔強迫のある28歳の女性にMSSM法を適用し、その経過を「忘れておく」ということについて考察している。不潔強迫のため、実母や祖母に家事を任せきりであることに、問題を感じておらず、他者を強迫状態に巻き込んでいる。そのため、薬物治療では限界があると考えられたため、診察に加え面接を開始した。面接で、症状のみに焦点をあてる面接は、クライエントの意識をより一層、症状に集中させ、症状を強化する方向に働くことが危惧されたため、描画(樹木画)を取り入れることとなる。樹木画では、クライエントの自己像を映し出し、それをもとにした面接では筆者がクライエントの直すべき点を指摘するかたちになっていたため、その関係を変え、症状や治療から意識をそらすためにMSSMを導入した。樹木画では以前の樹木画と比較を語っていたが、MSSMでは内容を比較する話は出なかった。
強迫性障害では「忘れておく」能力が欠如し、症状に意識を集中するほど、その症状に対する感覚は鋭敏となり、症状に対して感じる苦痛は増大する。症状にとらわれ「忘れておく」ことのできなさが、病理の根底にあると筆者は考えている。また、筆者は夢とMSSMを絡めて、夢もMSSMも複数のとりとめのないイメージを統合させており、MSSMは目覚めた状態において、治療者と患者の共同で見る夢ともいえるかもしれないと述べている。また、とりとめのないイメージを統合したからといってそのとりとめのなさは存在する。その曖昧なものを受け入れられるようになったということが、治療的に効果があったと述べている。面接が進み、クライエントは「調子の悪いときは、診察室で症状のことを話して、聞いてもらうと楽になったけれど、今はむしろ、話すと逆に症状に考えが集中して、つらくなってしまう」と述べた。その後、通常に診察に切り替えている。
 MSSMは、その遊び的側面のほかに、良質な夢と類似の働きをもつ。患者に「忘れておく」能力を賦与する。これが、本症例において、MSSMが治療的に作用した理由と筆者は考えている。
スクリブル法、スクイッグル法をふまえた、MSSM法およびMSSM+C法の紹介とその事例を提示している。
一つは不登校の中学三年生女子の事例である。言語的な対応がほとんどなく、ときどき不明熱、頭痛、腹痛、肩こりなどの身体症状を呈していた。こうした心身症状に薬物はまったく効果なかった。MSSM法をやりすすむうちにMSSM+C法に発展した。クライエントはやや表面的な反応に終始するも、回を追うごとに積極的に関与できるようになった。こうした、些細ともみえる窓口が開いたことで、クライエントとの関係性を保持することができ、やがてはクライエント自身の決断を促した。結局、中学は校長裁量で卒業となったが、その後は、独自に選んだ英語専門学校に通いだした。
二つ目は自閉的傾向のある14歳男子である。単語を羅列しただけのような、物語りの仕方をしていたが、回を追うごとに、テーマが生まれてきたり、テニオハがついたり、論理的な思考の展開すらも可能になった。それらを解釈することで、クライエントの一見理解しがたく見える内界の、ひとつのディメンジョンをあらわにしうるのではないかと筆者は述べている。
三つ目の事例は、うつ状態が酷く、強い希死念慮のある30代後半の女性の事例である。この事例では、MSSMのひとコマに物語を書き込むのではなく、クライエントが原稿用紙に短編小説とも言えるほどの物語を創作している。山中(2003)にて同じクライエントの話が述べられている。面接は継続中であり、数年に渡る面接の途中のひとつの小説が掲載されている。それまでのほとんどの物語が、自殺か、事故で終わっていたのだが、掲載されている小説では、それらを乗り越える姿勢が見られるようになっている。このクライエントにとって大変にフィットした自己表現法を提供しえたと述べている。
老松、三浦、工藤(2003)は、MSSM-C法の解説のほか、三つの事例を提示している。
事例を指して、MSSM-C法は、言語的接近が困難なクライエント、治療関係の確立が容易でないクライエントに対しても安全かつ効果的に心理療法を進めていけると述べている。
まず一つ目は、身体表現性障害(左項部痛)の14歳男子中学生の事例である。5歳時よりネフローゼの既往があり、それによってさまざまな制限のため「子ども」を生き足りなかった。項部痛によって背後(無意識的なもの)を見ることができないというのは、その理不尽さへのみずからの怒りを直視できなかったためと考察されしている。MSSM法を導入することにより、自身の深い感情を上手く捉えられないクライエントが、それを表現してアクティブに対峙できるMSSM法という手段を提供することにより、広い意味での心身症的な症状が改善されたと述べている。
二つ目の事例は、自己臭恐怖の16歳女子高生の事例である。クライエントは治療には消極的だった。無意識からもれ出てきたものを意識の糸で縫い合わせるMSSM法の作業により、否定的なものが捉えられ、その肯定的な面が意識化された。また、そこにはクライエントの治療への信/不信の変化なども描き出されたと述べている。
三つ目の事例は、中学生時に自己視線恐怖が出現し、高校二年時に離人症状から厳格妄想状態となり、精神科を受診。いったん収まるが、その後も何度か抑うつ感や離人感が強まり、自殺企図も。精神科を転々としてきており、治療関係が長続きしない32歳男性である。夢分析とMSSM法を行う。クライエントは思春期以降、自身の醜い部分を受け入れられずに苦闘してきたが、夢分析とMSSM法によって自分のプロフィールを書き出した。クライエントは一過性の精神病状態に陥ったが、深層の姿の定かではないものは、最後にMSSM法の意識の糸でしっかりつなぎとめられた。そして、創造的なアイデンティティの一部となり、治療は終結した。
言語の要素は6つのレベルに分けることができる。
記号(音声、記述、手話)
文法・統語
単語の意味
連想
文脈
メタファー

分裂病者にも豊かに存在するはずの連想能力とそれに呼応するイメージ、情感、ことばを更新する能力を詩歌療法の前提と考えたい。
最近では来談する学生たちに絵画や箱庭を勧めても、なかなか応じてくれなくなった。苦手意識が強いとか、評価を恐れるというだけでなく、イメージが湧かないらしいのである。たしかに、授業中も、一昔前ならノートに退屈しのぎの落書きのひとつもしていたところだが、ここ1,2年の間に携帯メールの送受信に取って代わられてしまった。

芸術療法における言語の果たす役割
 第1に、イメージを自分の記憶のや意識のなかに、経験として定着させるために(直感像保持者でない限り、言葉にして頭の中で半数することによってようやく長期記憶化できる)。第2に、イメージを他者に伝え、最大限共有するために(同じ絵を見ても、クライエントとセラピストが受け取るメッセージは相当に違う場合があるが、そのずれを修正できる)。
Copyright c メモ帳 All Rights Reserved
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]