23歳の男性で、精神分裂病と診断され、自殺企図もある。退院後も引きこもり傾向が強く、デイケア参加が困難であった。絵画療法とコラージュ療法はデイケア開始一ヶ月後から開始され、当初は絵画療法で描画ができなかった。これは自己イメージを安定して保持できない状態と考え、デイケアを通し、自己イメージがつくられることを期待して、描画活動を続ける。また、作品完成後に治療者と共に『言葉による題名作り』を行った。次第に、自己像は明確になり、女性像が抽象的なものから現実的なものとなった。また、このケースでは作品で表現されたものが、後の現実で実際に展開しており、現実場面に出る前に安全な世界でリハーサルを行っていると言える。
『言葉による題名作り』の作業は、作品に本人にとっての意味を持たせ、また、イメージから現実へ移行期間に両者の架け橋としての役割を果たした。
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