スクリブル法、スクイッグル法をふまえた、MSSM法およびMSSM+C法の紹介とその事例を提示している。
一つは不登校の中学三年生女子の事例である。言語的な対応がほとんどなく、ときどき不明熱、頭痛、腹痛、肩こりなどの身体症状を呈していた。こうした心身症状に薬物はまったく効果なかった。MSSM法をやりすすむうちにMSSM+C法に発展した。クライエントはやや表面的な反応に終始するも、回を追うごとに積極的に関与できるようになった。こうした、些細ともみえる窓口が開いたことで、クライエントとの関係性を保持することができ、やがてはクライエント自身の決断を促した。結局、中学は校長裁量で卒業となったが、その後は、独自に選んだ英語専門学校に通いだした。
二つ目は自閉的傾向のある14歳男子である。単語を羅列しただけのような、物語りの仕方をしていたが、回を追うごとに、テーマが生まれてきたり、テニオハがついたり、論理的な思考の展開すらも可能になった。それらを解釈することで、クライエントの一見理解しがたく見える内界の、ひとつのディメンジョンをあらわにしうるのではないかと筆者は述べている。
三つ目の事例は、うつ状態が酷く、強い希死念慮のある30代後半の女性の事例である。この事例では、MSSMのひとコマに物語を書き込むのではなく、クライエントが原稿用紙に短編小説とも言えるほどの物語を創作している。山中(2003)にて同じクライエントの話が述べられている。面接は継続中であり、数年に渡る面接の途中のひとつの小説が掲載されている。それまでのほとんどの物語が、自殺か、事故で終わっていたのだが、掲載されている小説では、それらを乗り越える姿勢が見られるようになっている。このクライエントにとって大変にフィットした自己表現法を提供しえたと述べている。
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