某短期大学児童福祉学科(保母養成)1年生の女子学生で、1998年1月の小児保健学実習に参加した45名を対象に、コラージュ制作を試みた。
コラージュ制作の前後に日本版POMS(J-POMS)と東大式エゴグラム(TEG)を実施した。
台紙は四つ切り(38×54cm)の画用紙を用意した。
また、コラージュ制作に際し、学生の持参した雑誌からのマガジン・ピクチャー法と筆者の用意したコラージュ・ボックス法の二つの方法が併用された。
J-POMSの結果
緊張-不安(T-A)が低下
抑うつ-落ち込み(D)が低下
怒り-敵意(A-H)が低下
活気(V)が上昇
疲労(F)が低下
混乱(C)が低下
コラージュ制作前後の精神・身体的変化では緊張-不安、抑うつ-落ち込み、怒り-敵意、混乱、疲労の改善がみられ、活気をもたらすと推察された。
また、J-POMSの6感情尺度の変化状況によって異なるのかを比較検討した。
6尺度のすべてが変化したものをⅠ群に、それ以外をⅡ群とした。
Ⅰ群では、6感情尺度のすべてに有意差を認め、Ⅱ群ではA-Hのみに有意差が認められた。怒りや敵意の感情だけは減少し、穏やかな気持ちに変化していくことが示唆された。
その両群をコラージュ制作前後のTEGの平均点と比較したところ、前者のみにAとFCの2因子が有意に上昇していた。J-POMSのすべてが変化していた場合にのみ、統合・適応性に富んだ、いわば素直で思うままに言動する子どものような気分が導きだされるのではないかと推察された。退行することで(FC)、より良い(A)統合を獲得していくことが理解できると思われた。
Ⅱ群とエゴグラムの関係ではJ-POMSの内容から、3型に分類し、TEGとの比較を試みた。その結果、D低下はACに、C低下はCPとACに有意な変化が見られた。抑うつ-落ち込みの低下は自信に満ち、現実回避からの回復を生じさせ、混乱の低下は理想を追求し、かつ柔軟性の豊かさをもたらすと同時に、協調性や自主性をも回復させてくれるものと思われた。
これらの結果から、Ⅰ群とⅡ群とでは異なる自我状態が示唆された。
また、Ⅰ群では特殊なコラージュ方法をしたものがいなかったのに対し、Ⅱ群ではすげかえが2名、裏コラージュが1名みられていた。
まとめ
J-POMSでは、緊張-不安、抑うつ-落ち込み、怒り-敵意、混乱、疲労は制作前よりも制作後に得点が有意に減少し、活気は結いに上昇していた。コラージュ制作が精神・身体的変化をもたらすことが推察された。
また、Ⅰ群とⅡ群では前者が6尺度のすべてに有意な変化があり、後者はA-Hのみに優位な変化が認められた。
TEGの平均得点で比較したところ、Ⅰ群のみにAとFCに優位差が認められた。Ⅱ群をJ-POMSの内容から3型(低下、不変、上昇)に分類し比較検討したところ、D低下はACに、C低下はCPとACに有意差が認められた。
Ⅰ群ではみられなかったすげかえや裏コラージュがⅡ群にみられた。
以上のようなことから、コラージュ制作を行うことは精神・身体的な効果としてのストレス緩和作用が得られるばかりでなく、自我状態にも飾り気のない素直な気分、現実回避からの回復、協調性や自主性などの自信に富んだ、一種のカタルシス効果を及ぼしている可能性が示唆され、心身症をはじめ、種々の治療に与える効果が期待できると思われた。
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現実感の回復はTEGで測れると考えてよいのか?
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